製鉄の街・北九州 現状とこれから

環境保全に舵を切った北九州

官営八幡製鉄所の流れをくむ日本製鉄の高炉がある「製鉄の街」北九州市。近隣自治体にトヨタ自動車九州(レクサスとトヨタのエンジン・ハイブリッド部品を主に生産)や日産自動車九州(セレナ、X-TRAIL等を生産)等の完成車工場が進出してからは「鉄と車の街」として栄えてきました。

しかし、完成車の海外への輸出の比率が高かったこともあって、2008年のリーマンショックを機に失速。その後も、米中貿易摩擦の影響で「鉄冷え」が続いていたところに、新型コロナウイルスの感染拡大や半導体不足が原因の生産調整などもあって、特に北九州の地元企業が影響を受けています。

そこで、高度経済成長期に工場から排出される有害な煙害や海に垂れ流される工場排水が社会問題になった北九州市が近年注力しているのが、環境に優しい「洋上風力発電」です。

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西日本唯一の洋上風力発電の拠点

北九州市の洋上風力発電への取り組みは、他の自治体と比べても、かなり力を入れています。例えば、2021年10月には日本で初めて「世界洋上風力サミット」を開催しています。また、北九州市は洋上風力の建設やメンテナンス拠点として、西日本唯一の基地港湾に指定されています。

北九州市の目指す「風力発電関連産業の総合拠点」は、次の4つの機能を備えるものです。

  1. (1)風車積出拠点:風車設置場所へ向けた最終積出基地としての機能
  2. (2)輸移出入拠点:風車部品の輸出入、移出入拠点としての機能
  3. (3)O&M拠点:風車のオペレーションおよびメンテナンスを行う機能
  4. (4)産業拠点:背後地に風車関連産業を集積し産業拠点としての機能

北九州地域には、モノづくり産業や響灘地区の広い産業用地などの強みがあります。地元企業による風車の部品製造への参入や、市内外から響灘地区への風力発電関連工場の進出が期待できることから、風力発電関連の産業拠点を目指し、地元企業の参入支援や風力発電関連工場の誘致に取り組んでいます。

北九州市は、風力発電の導入と関連産業の総合拠点形成推進の一環として、2022年夏から秋にかけて「北九州市洋上風力キャンプ」を開催します。この取り組みのひとつとして、大学生・大学院生を対象とした「洋上風力発電研修」を、2022年8月〜9月に実施します。研修や企業訪問などを通して洋上風力発電について学ぶ内容で、洋上風力発電産業の人材育成を目指しています。

若者の市外流出と市民の高齢化が続く北九州市では、洋上風力発電の拠点化事業で新たな雇用を創出することで、北九州大学、九州工業大学など、北九州市にある大学や大学院で学んだ学生の定住促進を目出しています。

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洋上風力発電推進における課題

洋上風力発電の課題は「建設・維持コスト」「地元との調整」「送電などのインフラ設備」と言われています。

「建設・維持コスト」については、北九州市沖で実証研究中の洋上風力発電設備「ひびき」で、本体を軽量化できる世界でも珍しい2枚羽タイプ(洋上風力発電は3枚羽が主流)を導入すること等で、事業化に向けて発電コストの低減を目指しています。

「地元との調整」は、地元自治体の北九州市主導が商社的な機能を担うことで、東京本社の大手総合商社主導の洋上風力発電プロジェクトより強みがあります。

「送電などのインフラ設備」については、響灘やその臨海部で、九州電力の子会社など5社で作る「ひびきウインドエナジー」が、総額1750億円程度を投じて洋上風車25基を設置。最大22万キロワットを発電するプロジェクトを進めています。

《参考資料》
北九州市公式ホームページ「グリーンエネルギーポートひびき事業」(ページ番号:000154761)

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